[修士論文] 入力デバイス操作の分析に基づく開発者の関心位置推定
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28 2026
小林研M2の山中さんが修士論文を提出しました.
題目:入力デバイス操作の分析に基づく開発者の関心位置推定
論文概要:
ソフトウェア開発において,開発者がどこに注意を向け,どのようにコードを探索して理解しているかを把握することは,コード理解支援,デバッグ支援,学習支援などに有用である.視線計測(アイトラッキング)は注意の向き先を比較的直接に捉えられる一方,専用機材,キャリブレーション,継続計測の難しさなどから実運用の障壁が大きい.そこで本研究は,実開発環境でも低コストに継続取得できるデータとして,マウス操作とIDE文脈ログ(ファイル,行・列,アクション等)を統合して記録し,これらが開発者の注意・探索行動をどの程度捉えられるかを検証する.
まず,IntelliJ Platform向けに自作プラグインを実装し,エディタ上のマウス移動・クリック,キャレット移動,IDEアクション,IDEのアクティブ状態をJSONL形式で収集した.収集したマウス座標は論理行・列へ変換し,srcMLに基づくトークン表へ対応付けることで,メソッド要約タスクにおけるAOI(signature/body/call/control flow)別の注意量を定義した.トークンに割り当てできない割合を明示し,さらに同一行内の最近傍トークンへのスナップによりトークンへの割り当てできない割合を低減する処理を導入した.
“評価では,(RQ1) メソッド要約(コード理解)タスクにおける注意配分を,先行研究の視線計測結果と比較した.その結果,AOI別の総滞在時間割合の順位は先行研究と一致した一方で,AOI内の用語数で正規化した指標では,とくにcallにおいて視線と異なる傾向が観測された.また,マウスログでは対象メソッド外への参照が相対的に多く観測され,マウス操作が能動的な探索(外部コンテキスト取得)を反映しやすい可能性が示唆された.次に,(RQ2) バグ特定タスクにおいて,注意コンテキスト(mouse_move由来)と操作コンテキスト(クリックやキャレット移動等)を比較し,注意コンテキストの方が多くのメソッド・クラスを含むこと,両者の重要要素ランキング(Top-k)の一致が限定的であることを示した.さらに,変数スライスに基づく遷移分析により,データフロー追跡に対応する一定の集中は見られるが,視線研究と同程度の強さで現れるとは限らないことを議論した.また、(RQ3) マウスから注意推定を行うモデルを先行研究の手法で作成し評価することで,メソッド要約生成モデルに組み込むアテンション機構のモデルとしての有効性を議論した。
以上より,マウス・IDEログは,視線の完全な代替ではないが,開発者の注意配分や探索の一部を低コストに捉える手段として有望である.トークン割当ての失敗やスナップへの依存,変数追跡のような局所的読解の感度差などが課題として残るものの、メソッド要約モデルへの組み込みなどソフトウェア開発支援への展開が期待できると結論づける。


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